インハウスマーケティング[コラム]
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2025年9月30日
「分かってるのに、買ってしまった。」マーケターをも動かす7つの戦略

「自分はマーケターだから、売り込みの仕組みは大体わかっている」「どんな営業手法でも買わされない自信がある」「まさか自分が即決で3万円も払うなんて...」
もしあなたが「マーケティングの手法は知っているから大丈夫」と思っているなら、私の体験談を聞いてください。実は私、マーケティングのプロでありながら、たった1枚のチラシから3万円の商品を即決購入してしまったのです。
神田でマーケティングの仕事をしているNODAと申します。今回は、私自身が「やられてしまった」整体院のマーケティング戦略を徹底分析して、あなたのビジネスに応用できる7つの戦略としてお伝えします。
この記事を読めば、「お客様が自然に買いたくなる仕組み」の作り方が具体的に理解できるはずです。
目次
1. なぜプロのマーケターが「やられた」のか?
■ 始まりは1枚のチラシから
私は最近、デスクワークによる眼精疲労に悩んでいました。夕方になると目がかすむ、老眼も気になる...そんな時、会社のポストに1枚のチラシが入っていたのです。
そこに書かれていた言葉は**「眼に特化した整体院」**。
「え?整体院なのに眼?」
この瞬間、私の頭は混乱しました。今まで聞いたことがない組み合わせだったからです。
そして気がつけば、その日のうちに予約を入れ、数時間後には3万円の回数券を購入していました。
■ 体験の流れはまさに教科書通り
当日の流れを振り返ると、完璧なマーケティングの教材のようでした:
チラシで興味喚起
無料カウンセリングで安心感を提供
眼の検査でビフォーを数値化
EMS機器による施術で体感を提供
再度検査でアフターを数値化
変化を実感させる
施術プランを自然に提案
特別プランで回数券購入へ
「どんな営業手法でも買わされない自信がある」と思っていた私が、なぜこんなにも簡単に購入してしまったのでしょうか?
その秘密を7つの戦略として解説していきます。
2.【戦略1】「専門特化」で競合を無効化する
■ 差別化の威力
最初の秘密は「眼に特化した整体院」というポジショニングにありました。
一般的な整体院の場合:「肩こり・腰痛・頭痛を改善します」→ 他の整体院と同じで印象に残らない
この整体院の場合:「眼に特化した整体院」→ 他に類を見ない、記憶に残る
この差は決定的です。お客様は「肩こりの整体院」と「眼専門の整体院」を比較することができません。なぜなら、比較する対象が存在しないからです。
■ あなたのビジネスへの応用例
税理士: 「YouTube専門税理士」
清掃業: 「ペット専門ハウスクリーニング」
英会話: 「プレゼン特化英会話」
コンサル: 「地方企業限定経営相談」
■ 実践のポイント
既存の専門性をさらに細分化する
ターゲットの悩みをより具体的に絞る
「○○といえばあの会社」のポジションを狙う
既存のサービスを、より具体的な悩みに特化させることで、唯一無二のポジションを作ることができるのです。
3.【戦略2】初回オファーで「試さない理由」を消去する
■ 75%オフが生む心理効果
チラシに書かれていた「初回75%オフ」という言葉が、私の行動を決定づけました。
通常12,000円の施術が、初回だけ3,000円。
この価格設定の心理的効果は絶大です。
私の心理:
「この値段なら、もし効果がなくても諦めがつく」
「試してみて損はない」
「まずは1回だけ」
■ 真の目的は体験機会の創出
ここで重要なのは、この整体院の真の目的は「初回で利益を出すこと」ではありません。「お客様に体験してもらうこと」なのです。
なぜなら、一度体験してもらえれば、その後のプロセスで「本当の価値」を伝えることができるからです。
■ 他業界での応用例
コンサル: 初回相談90%オフ
教育: 1ヶ月無料体験
美容: 初回施術半額
ジム: 1週間無料体験
■ 初回オファー設計のコツ
安すぎて「不安」にならない価格設定
高すぎて「ためらう」ことがない価格設定
継続プランとのバランスを考慮
必ず期限や条件を設ける
4.【戦略3】「数値化」×「体感」で心を動かす
■ 論理と感情の二重構造
施術の流れはこうでした:
施術前の測定 - 眼の状態を数値で測定
実際の施術 - EMS機器で物理的に刺激を感じる
施術後の測定 - 改善された数値を確認
この流れの巧妙さに気づくでしょうか?
「数値」で論理的に納得させる→「体感」で感情的に納得させる→「再測定」で効果を証明する
人は「論理」だけでも「感情」だけでも動きません。両方が揃って初めて「納得」するのです。
■ 他業界での応用例
ダイエットジム: 体重測定 → トレーニング → 再測定
学習塾: 実力テスト → 授業 → 確認テスト
営業研修: スキル診断 → 研修 → ロールプレイ評価
美容: 肌測定 → 施術 → 効果測定
■ 体感設計のポイント
測定可能な指標を設定:客観的なデータで現状を把握
実際に変化を感じられる体験:五感で効果を実感できる仕組み
変化の再確認:改善を数字で証明し確信に変える
5.【戦略4】信頼は「積み重ね」で作る
■ 多角的な安心材料の提供
この整体院のチラシをよく見ると、信頼を築くための工夫が随所に見られます。
お客様の声の工夫
大人の声だけでなく「子供の声」も掲載
年齢や職業の異なる人々の体験談
具体的な改善内容を記載
実績の明示
2年で20店舗展開
施術件数や満足度
メディア掲載歴
透明性の確保
施術内容の詳しい説明
料金体系の明確化
スタッフの顔写真と経歴
■ 信頼構築の6要素
社会証明: 様々な属性のお客様の声
実績: 具体的な数字や成長ストーリー
専門性: 資格や経験、メディア掲載
透明性: サービス内容や料金の明確化
人間性: スタッフの顔や人柄が見える情報
継続性: 長期的に安定したサービス提供
一つひとつは小さなことですが、これらが積み重なることで「この店なら安心」という印象を作り出しているのです。
6.【戦略5】LINEで継続的な関係を構築する
■ 顧客導線の設計
この整体院の賢いところは、予約をLINE限定にしていることです。
電話予約の場合:
その場限りの関係
追加の接点がない
リピート促進が困難
LINE予約の場合:
継続的な接点を確保
健康情報の発信が可能
次回予約の案内もスムーズ
つまり、たとえ初回で購入に至らなくても、LINE経由で継続的にお客様との関係を築いていけるのです。
■ CRM戦略の効果
入口: チラシ
予約: LINE限定(接点確保)
体験: 店舗での施術
継続: LINE経由でのフォローアップ
現代のマーケティングでは、一度の接触で購入してもらうことは困難です。複数回の接触を通じて、徐々に信頼関係を築いていくことが重要なのです。
■ 継続的関係構築のポイント
予約ハードルの軽減: 気軽に連絡できる環境
顧客データの蓄積: 継続的なコミュニケーション
自動化の仕組み: 効率的なフォローアップ
価値提供: 商品案内以外の有益な情報発信
7.【戦略6】「売り込み」を「提案」に変える技術
■ 自然な購買動機の創出
施術を終えた私。眼の数値は明らかに改善し、体感でも「確かに違う」と感じていました。
この状態で整体院のスタッフから提案されたのが、3万円の回数券でした。
しかし、私はこの時「売り込まれている」とは感じませんでした。なぜでしょうか?
■ 心理変化のシナリオ
私の心理変化:
数値で現状の問題を認識
施術で改善の可能性を体験
再測定で効果を確認
「続けてみたい」と自然に思考
回数券の提案を受ける
「これは良い提案だ」と納得
重要なのは、お客様自身が「必要性」を感じた後に、解決策を提示していることです。
■ 売り込み型 vs 提案型
従来の売り込み型:「この商品は素晴らしいです。今すぐ買ってください」
提案型:「あなたの状況を改善するには、こんな方法があります」
この違いが、お客様の受け取り方を大きく変えるのです。
■ 提案型セールスの流れ
問題認識: 現状の課題を明確にする
解決体験: 改善の可能性を実感してもらう
効果確認: 変化を客観的に証明する
必要性認識: 継続の価値を自分で気づいてもらう
解決策提示: 最適な選択肢を提案する
納得決断: 論理と感情で納得して決断
8.【戦略7】「仕組み化」で急成長を実現
■ 属人性を排除したビジネスモデル
この整体院が2年で20店舗に展開できた理由。それは、すべてのプロセスを「仕組み化」したことです。
仕組み化された要素:
チラシのデザインとキャッチコピー
お客様への接客フロー
施術の手順とプロセス
価格設定とオファー内容
LINEでのフォローアップ
これらをマニュアル化することで、どの店舗でも同じ品質のサービスを提供できるようになったのです。
■ 標準化のメリット
品質の一定化: どのスタッフでも同じ成果を出せる
教育の効率化: 新人研修の時間とコストを削減
改善の速度: 成功パターンを素早く横展開
拡大の実現: 個人の能力に依存しないビジネス
■ 仕組み化のステップ
成功パターンの特定: うまくいっている要素を洗い出す
プロセスの文書化: 手順を詳しくマニュアル化
教育システム構築: 誰でも実行できる研修制度
品質管理の仕組み: チェックリストや評価制度
改善サイクル: データに基づく継続的改善
個人の才能や経験に頼るビジネスは拡大が困難ですが、仕組み化されたビジネスは急速な成長が可能になります。
9. 今日から始める3つのアクション
私の体験から学べることを、あなたのビジネスで実践するための具体的なアクションをご紹介します。
■ アクション1:自社の強みを「専門特化」で表現する
やること:
自社のサービスをより具体的に分類する
ターゲット顧客の悩みを詳しく洗い出す
「○○専門」として表現できるポイントを見つける
具体例:
一般的な「税理士事務所」→「飲食店専門税理士」
普通の「英会話教室」→「海外出張特化英会話」
通常の「整体院」→「スポーツ障害専門整体」
成功のポイント:競合他社と比較されない独自のポジションを作ること
■ アクション2:初回体験の仕組みを設計する
やること:
お客様が「試してみたい」と思う初回オファーを考える
体験で価値を実感してもらう流れを設計する
継続利用につながる提案を準備する
初回オファーの例:
コンサル: 90分無料相談 + 簡易診断レポート
教育: 1週間無料体験 + 学習診断テスト
美容: 初回半額 + カウンセリング
ジム: 無料体験 + 体成分測定
設計のポイント:
価値を実感できる内容にする
継続プランとの価格バランスを考慮
期間限定や条件を明確にする
■ アクション3:お客様との継続的接点を作る
やること:
LINEやメールでの情報発信を開始する
お客様にとって有益な情報を定期的に配信する
自然な形で次回利用を促す仕組みを作る
継続接点の例:
週1回: 業界情報や役立つTipsをLINE配信
月1回: お客様向けのお得情報やイベント案内
必要時: フォローアップやアフターサービス
コンテンツの比率:有益な情報8割 + 商品案内2割の バランスを心がける
10.まとめ:マーケティングの本質とは
私の体験から学べることは、マーケティングの本質は**「お客様が自然に欲しくなる体験をデザインすること」**だということです。
成功の7要素を再確認:
差別化 - 独自のポジションを確立
オファー - 試すハードルを下げる
体験設計 - 論理と感情で納得させる
信頼構築 - 複数の要素で安心感を創出
顧客導線 - 継続的な関係を築く仕組み
セールス - 自然な購買動機を生む流れ
仕組み化 - 拡大可能なビジネスモデル
これらは単独で使うのではなく、統合的に設計することで大きな効果を生み出します。
「マーケターだから自分は惑わされない」と思っていた私でさえ、見事にこの戦略にハマってしまいました。
でも、それは決して「騙された」のではありません。本当に価値のあるサービスを、最適な方法で体験し、納得して購入したのです。
これこそが、真のマーケティングなのです。お客様と事業者、両方が幸せになる関係を作ること。そのための「仕組み」を考え、実践することから、あなたのマーケティングは始まります。
小さな改善を積み重ねることで、必ず成果は現れます。最も重要なのは、常にお客様の立場に立って考えることです。
今日からできることから始めて、継続的に改善していきましょう。きっとあなたのビジネスにも素晴らしい成果が現れるはずです。
私的には、眼の治療とマーケティングの学びを同時に得られた、一言で表せない感動の体験でした。
(マーケティングの言語化なら私たちにご相談ください)